内視鏡検査は副院長の大家(おおや)が担当しております。2024年で私が当院に赴任して14年になりますが、内視鏡件数は別表のように年々増加しております。改めて内視鏡検査の需要の多さと対応すべき責任を痛感しております。
*2016年9月からは岡山大学病院消化器内科の内視鏡専門医が毎週火曜日に上部消化管内視鏡(胃カメラ)を行い、ますます増える内視鏡検査の需要に対応できるようにしております。
当院での内視鏡検査の実績
年度 | 胃カメラ | 大腸カメラ |
2018年度 | 1421 | 518 |
2019年度 | 1419 | 490 |
2020年度 | 1260 | 492 |
2021年度 | 1284 | 502 |
2022年度 | 1260 | 522 |
2023年度 | 1307 | 510 |
それでは当院での最近の上部消化管(食道、胃、十二指腸)、下部消化管(大腸)の内視鏡検査について御案内します。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)の有用性と必要性
2013年にヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の検査や除菌治療の保険適用が胃炎にも拡大されました。ただ保険診療でピロリ菌検査を受けるためには内視鏡検査が必須となり、例えば検診の胃レントゲン(バリウムの検査)では以前は精査不要と判定されていた慢性胃炎が、要精査(内視鏡検査とピロリ菌検査が必要)と判定が変わることになりました。そのため検診後に内視鏡検査目的で受診される方が増加しています。
【ピロリ菌検査と治療については健康図書館のページを参照してください】
さらに全国の各自治体で胃がん検診に内視鏡が導入されるようになり、岡山市でも2016年から内視鏡による胃がん検診が始まりました。
従来胃がんは日本人に非常に多いがんとして認識されていましたので、以前から胃カメラが必要な方、胃カメラでの精査を希望される方は多いのですが、さらに必要性が高まっています。
内視鏡検査は胃だけではなく、食道、十二指腸も精査します。
逆流性食道炎は最近増加している消化器疾患の一つであり、バリウムの検査だけでは診断は難しいと思われます。また胃がんに比べると頻度は少ないですが、食道がんの診断にも内視鏡検査は必須です。
十二指腸の病気は胃に比べるとかなり少ないですが、これもバリウムの検査では診断が難しいことが多く、やはり内視鏡が必要となります。
これらの理由から胃カメラはまだまだ需要が多くなることが予想されます
使用する胃カメラと検査時の工夫について
当院での胃カメラは鼻から入れる経鼻内視鏡と口から入れる経口内視鏡と両方に対応しています。
緊張が強い方や経口内視鏡で検査中にオエッという反射が気になる方には鎮静剤(眠くなる薬)の注射をして検査することも可能です。鎮静剤は患者さんの性別、年齢、体格等に合わせて一人一人投与量を変えて、過量にならないように慎重に投与しています。
また内視鏡自体についても経鼻に適した機種、経口に適した機種についてそれぞれ慎重に検討し、私自身が納得できるものを選定しています。
以前は、“経鼻内視鏡は画質が悪い”という認識がありましたがそれを覆すような高画質の経鼻内視鏡シスイムが開発されたことで患者様の選択肢を増やせました。経口内視鏡システムにつきましても新しいシステムを採用しさらに精細な検査が可能となっております。
下部消化管内視鏡(大腸カメラ)による検査について
大腸は近年ますます注目されている臓器です。
何故注目度が高いのか。以下の3つの要因が大きいと思います。
1.大腸癌
大腸癌は罹患数が2019年で男性、女性とも第2位、男女合計では1位になっており、死亡数でも2019年で男性で2位、女性で1位、男女合計で2位と日本人において非常に多い癌腫の一つとなっています。
同じ消化管の癌でも、胃癌は大半ピロリ菌が原因であることが分かってきた現在では、除菌治療によって今後胃癌は減少することが予測されますが、大腸癌はしっかりと対策を講じないと最も多くの日本人の敵となる癌腫で有り続けることとなります。
まず大事なのは大腸癌検診(検便)を受けていただくこと。そして検便で潜血反応が1回でも陽性と判明すれば必ず精査(大腸内視鏡)を受けていただくこと。これが大事です。最近の統計でも大腸癌検診の精密検査受診率は5割程度にとどまっており、大きな問題と言われています。
精密検査受診率を上げることが大腸癌で亡くなる方を少しでも減らすことのできる最も身近な方法だと思います。
他に御両親や兄弟、姉妹が大腸癌に罹患されたことがある方は大腸癌の高リスクになりますので、早めの時期に一度大腸内視鏡を受けていただくことをお勧めします。
【もっと詳しく知りたい方は健康教室の 「胃と腸の癌について」のページをご覧下さい】
2.炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)
いずれも消化管に慢性の炎症を起こし、種々の合併症を併発する病気です。いずれも厚生労働省の難病に指定されています。
2016年時点での潰瘍性大腸炎罹患者数は約16万人、クローン病罹患患者数は約4万人です。患者数は右肩上がりで増加しており、特に潰瘍性大腸炎は指定難病の中で最も患者数が多い疾患です。
いずれも若年で発症することが多く、学生~働き盛りの年齢で罹患していることが多いため、少し大袈裟に言えばこの疾患の対策がうまくゆかなければ、今後の日本の国力にも影響しかねないと思われます。
炎症性腸疾患の治療は日進月歩であり、免疫調整剤や生物学的製剤等、強力な内科的治療の手段が増えて来ています。病態によって外科的治療ともうまく組み合わせることでより良好なコントロールを目指すことができます。当院では生物学的製剤(レミケード、ヒュミラ)の維持投与を周辺の基幹病院と連携して施行しております。
3.腸内フローラ
大腸に関して最近特に注目されているのが腸内フローラです。
腸内フローラは腸内細菌叢のことで、約1000種類、1000兆個もの菌が存在すると言われています。しかもその70~80%は同定困難な菌とされており、まだ謎が多いのですが、腸内フローラは大腸の病気に影響を及ぼすことはもちろんのこと、他に全身の種々の病気(糖尿病、脂肪肝、動脈硬化、自己免疫疾患、アレルギー疾患等)にも影響を及ぼすことが分かってきており、研究が盛んに行われています。
そのことに関連して糞便移植という治療法も注目されています。糞便移植はクロストリジウム・ディフィシルという特殊な菌の感染による難治性腸炎に著効することがあり、アメリカではかなり普及してきていますが、日本でも近年急ピッチで臨床研究が進められています。
このようにいろいろな点で注目されている大腸は今後の消化管診療の中心となってゆくと思われます。そのため大腸内視鏡検査はこれからも益々需要が増えてゆくと思われます。
使用する大腸カメラと検査時の工夫について
当院の大腸内視鏡検査は“安全に、安楽に、正確に”を考えて行っています。また検査中の画像を患者さん御自身が観察できるモニターも設置しておりますので検査中御自由に画像をご覧いただけます。
・安全に
消化器内科医として約30年の経験を生かした安全な挿入、安全な処置を心がけています。大腸ポリープの粘膜切除時の粘膜下に注入する薬液の種類にも注意しています。また腸管内に送り込むガスも腸管内に残りにくい炭酸ガスを使用し、検査後や大腸粘膜切除後に腸管内に多量のガスが残らないようにしています。
・安楽に
検査中は御希望の方には適宜鎮静剤(眠くなる注射)を投与しております。鎮静剤は胃カメラの際と同様で、患者さんの状態に応じて投与量を慎重に決めております。またお腹の手術の影響で腹腔内に癒着ができている方や腸管が長かったり、屈曲が強くて挿入時の痛みが強かったり、挿入困難なケースには受動彎曲という機能(腸管の形状に沿ってscopeが入ってゆく機能)を装備しているscopeを使用しており、検査中の痛み、苦痛を少しでも軽減するように心がけています。
・正確に
“挿入は早めに、観察はゆっくりと”を心がけて行っています。より正確、精細な検査を施行できるように内視鏡システム自体の更新も心掛けています。
内視鏡(胃カメラ・大腸カメラ)の洗浄と消毒について
内視鏡検査を安全に行うためにスコープ、器具の洗浄、消毒は非常に重要です。当院では内視鏡技師と看護師がガイドラインを遵守してスコープ、器具の洗浄、消毒を厳重に行っており安心して内視鏡検査を受けていただくようにしております。
診察と検査予約について
内視鏡検査を安全に受診したいただくためには、内視鏡検査日とは別に事前診察が必要です。当院での内視鏡検査を御希望される方は当院までお電話いただき、検査前の診察日と内視鏡検査日を御予約いただいてご来院ください。
内視鏡検査日:
内視鏡検査を行っている曜日ならびに担当医師については診療案内のページ(診療予定表)をご覧ください。胃カメラは土曜日も行っており、お仕事などで平日に検査を受けられない方にも対応できますので、ご相談ください。
医療関係者の方へ:
当クリニックの内視鏡検査は医療施設からの御紹介の場合は電話での予約も承っております。内視鏡検査予約の御希望の際はお電話で一度ご相談ください。