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潰瘍性大腸炎とその治療について

2014.01.16

 

潰瘍性大腸炎とは

 大腸に炎症が起きることによって、大腸の粘膜が傷つき、ただれたり(びらん)、はがれたり(潰瘍)することで、腹痛や頻回の下痢、血便などの症状が生じる大腸の病気です。

 病気の原因は、遺伝的な要因に腸内細菌や食餌など様々な環境因子が重なり、通常は身体を防御するために機能している免疫に異常をきたすことで、この病気が生じると考えられています。

 潰瘍性大腸炎は、腹痛や下痢・血便などの症状がある状態を活動期、治療により症状が治まった状態を寛解期と言いますが、この活動期と寛解期を繰り返すことがこの病気の特徴です。

 したがって、治療により一旦、寛解期に入っても、再び大腸に炎症が生じる(再燃)ことから、再燃を予防するために長期にわたる治療が必要になります。また、発症後、長期経過とともに大腸癌の危険性が高まることから、定期的な検査を受けることも非常に重要です。

 増え続けている潰瘍性大腸炎

 この病気は、1970年代は稀な疾患とされていましたが、その後増加し続け、2011年度末には約13万人の患者さんが登録されています。男女比はほぼ同じで、発症は20歳代がピークです。

 

潰瘍性大腸炎の治療に際して

 潰瘍性大腸炎は、病変(びらんや潰瘍など)の範囲や重症度(症状や炎症の強さ)によって、いろいろな薬の種類やその投与方法が選択されます。

 1)あなたの病変範囲は

 潰瘍性大腸炎の病変は、基本的には直腸から口側へ広がっていきます。したがって、直腸に病変が限られる直腸炎型、脾彎曲までの病変を指す左側大腸炎型、脾彎曲を超える病変の全大腸炎型の3つに分けられます。

 2)あなたの今の重症度は

 排便回数、血便、発熱、脈拍、貧血(ヘモグロビン値)、赤沈(赤血球沈降速度)の程度によって、重症、中等症、軽症に分けられます。軽症では、通院による治療が可能ですが、重症は入院治療が必要となります。

 

潰瘍性大腸炎の内科的治療

1)知っておくべき治療の位置づけ

 軽症~中等症の活動期の寛解導入には、①5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤の経口剤、②5-ASA製剤やステロイドの局所製剤(坐剤、注腸剤)が用いられます。

病変範囲が狭ければ局所製剤だけによる治療も可能ですが、病変が広い場合や早期の治療効果を期待する場合には経口剤と局所製剤の併用療法が行われます。

 より症状が重くなると、③ステロイドの経口剤や注射剤が上記の治療に加えて用いられます。ステロイド剤は長期に使用する薬ではないため、効果が得られれば徐々に減量し投与を中止します。しかし、患者さんの中には、減量・中止の際に再燃する場合があり、このような患者さんには、④アザチオプリンなどの免疫調整剤が用いられます。

 さらにステロイドの経口・注射剤で効果が得られない場合は、⑤血球成分除去療法(LCAP、GCAP)が用いられたり、⑥免疫調整剤のシクロスポリンによる治療が行われる場合もあります。

 これらの治療で寛解導入できたら(寛解期)、再燃を予防するために、基本的には5-ASA製剤による寛解維持治療法が長期にわたり行われます。

 なお、これらの内科的治療で効果が認められない場合や大腸に穴が開いたり、大腸癌を合併している場合などは外科的治療を選択することになります。

 

2)服薬遵守を知っていますか

 潰瘍性大腸炎は、再燃を予防するために長期にわたって5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤:ペンタサ、サゾピリン)の服用が必要です。

 腹痛や下痢などの症状がある活動期には、きちんと医師の指示どおりに薬を服用できますが、症状がない寛解期に長期間にわたって薬を服用し続けること(寛解維持療法)は難しくなるようです。

 グラフをみてください。2年間の5-ASA製剤の服薬状況を調査した結果、指示どおりにきちんと服薬を守っていた患者さん(服薬遵守群)の約90%が寛解を維持できていました。一方、服薬を守っていなかった患者さん(服薬非遵守群)では約40%と低く、6割の患者さんで再燃したことが報告されています。また、服薬を守れない理由として、飲み忘れ(50%)、錠数が多いこと(30%)、薬の必要性を感じないこと(20%)が挙げられています。

 重要なことは、症状がない寛解期でも、服薬遵守することが再燃を予防し、長期にわたって寛解を維持することができるということです。さらに、5-ASA製剤の服薬の継続は、潰瘍性大腸炎に合併する大腸癌発症のリスクを低下させることも報告されています。したがって、服薬遵守は再燃予防だけでなく、大腸癌予防の観点からも重要となります。 

 

3)外来で用いられる治療薬・治療法

①5-アミノサリチル酸(5-ASA)経口製剤

 5-ASAを有効成分とする薬で、大腸の炎症を抑えます。多くの患者さんは活動期の症状改善と、寛解維持を目的に服用しています。

 代表的な薬にメサラジン経口剤とサラゾスルファピリジン経口剤があります。

 

②5-アミノサリチル酸(5-ASA)局所製剤

 直腸やS状結腸の炎症は潰瘍性大腸炎の下痢や下血の症状を規定します。これらの病変を改善することは、目に見えて実感できる症状の改善につながります。

 肛門から薬を投与して、直腸・S状結腸の病変へ直接的に作用させるための治療が局所療法です。

 5-ASAの局所製剤としては、メサラジン注腸剤とサラゾスルファピリジン坐剤があります。

 

③ステロイド局所製剤

 ステロイドは活動期の炎症を抑える薬としては非常に有効です。経口投与した場合は、ほとんどが吸収されて効果を発揮しますが、吸収されたステロイドには好ましくない作用(副作用)も発現します。そこで、病変部分に直接ステロイドを届けること(肛門からの注入)で、高い治療効果と副作用軽減を目的に局所製剤が用いられます。

※ステロイド製剤は、活動期の炎症を抑えるための薬です。寛解を維持する効果は認められていません。さらに長期使用すると重篤な副作用が発現するおそれがあります。

 

④ステロイド経口剤

 ステロイド経口剤は、中等症~重症の活動期の炎症を抑えて症状を改善するために用いられます。

 ステロイド経口剤は全身的な作用により、炎症反応や免疫反応を強力に抑制するため高い効果が得られます。しかし、長期に大量に使用すると副作用が問題となることから、効果が得られれば徐々に減量して投与を中止します。また寛解を維持する効果は認められていないため、寛解維持療法には使用されません。

※この薬を自分の判断で急に投与を中止すると症状の悪化などを引き起こす場合があります。必ず医師の指示に従い服用してください。

 

⑤免疫調整剤

 免疫調整剤は、もともと臓器移植時の拒絶反応の抑制や白血病などの治療薬として開発されましたが、潰瘍大腸炎の治療にも有効なことが明らかにされたことから、近年国内でも使用されるようになりました。主に国内で使用される免疫調整剤として、アザチオプリンやメルカプトプリンの経口剤があります。

 

⑥血球成分除去療法(LCAP,GCAP)

 国内で開発された治療法で、血液を腕の静脈から、一旦体外に取り出して、特殊な筒に血液を通過させることにより、特定の血液成分(主に血球成分)を除去し、その後再度血液を体内に戻すことで、効果を発揮する治療法です。

 血球成分除去療法としては、顆粒球・単球・リンパ球・血小板を除去するセルソーバ(LCAP)と、顆粒球・単球を除去するアダカラム(GCAP)があります。

 

4)入院で用いられる治療薬

 重症例などの症状が激しい場合は、入院した上で、強力な治療としてステロイド注射剤や免疫調整剤であるシクロスポリン注射剤による治療が用いられます。

 

潰瘍性大腸炎の外科的治療

1)こんなときは手術を考える

 ①強力な内科的治療を行っても効果が認められない場合、②大腸に穴があいてしまったり(大腸穿孔)、③大量の出血が認められたり、④大腸癌を合併した場合には、外科的治療が行われます。

 また、⑤頻回に入退院を繰り返して通常の生活が送れなかったり、⑥ステロイドによる重大な副作用が現れるおそれがある場合や、⑦大腸以外に生じる重篤な合併症(壊疽性膿皮症)などを生じた場合、さらには⑧小児で成長障害がみられて内科的治療が困難な場合なども外科的治療の対象になります。

 

 

 

 

お読みいただきありがとうございました。
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