機能性ディスペプシアとは
「食後のもたれ感」
「すぐに胃が一杯になるように感じて、それ以上食べられなくなる感じ」
「みぞおちの痛み」
「みぞおちの焼ける感じ」
などの症状があるにも関わらず内視鏡検査などを行っても、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどのような異常がみつからなかったり、それを説明できる異常がさまざまな検査でも認められない場合に「機能性ディスペプシア」と診断するようになりました。
以前は原因不明の「慢性胃炎」や「神経性胃炎」と診断されていました。
機能性ディスペプシアは生命にかかわる病気ではありませんが、つらい症状により、患者さんの生活の質を大きく低下させてしまいがちです。
特にこの病気で問題なのが、検査で異常がないと、不快な症状があっても、「気にし過ぎだろう」とがまんしてしまうことです。しかし、機能性ディスペプシア(FD)の治療は、患者さんの困っている症状を軽くし、患者さんの生活の質を高めるために行うものですので、がまんせずに自覚症状を主治医にできるだけ詳しく伝えて下さい。
機能性ディスペプシアの症状
機能性ディスペプシアは、大きく2つのタイプに分けますが、両方のタイプの症状が重なって起こったり、日によって感じる症状が変わったりすることもあり、どちらのタイプであるかはっきり分けられない場合も多くあります。
①食後愁訴症候群(しょくごしゅうそ症候群)
食後のもたれ感やすぐにおなかいっぱいになる感覚が週に数回以上おこるタイプです
②心窩部痛症候群(しんかぶつう症候群)
みぞおちの痛み(心窩部痛:しんかぶつう)やみぞおちの焼ける感じ(心窩部灼熱感:しんかぶしゃくねつかん)が起こりやすいタイプです。これらの症状は食後愁訴症候群と異なり食後だけでなく空腹時にも起こることがあります。
機能性ディスペプシアの原因
*以下はアステラス製薬社の資料から引用しています*
機能性ディスペプシア(FD)がなぜ起こるかを理解するために、まずは正常な胃のはたらきについてみてみましょう。
正常な状態の胃は、口から入った食べ物が食道を通って胃に入ってくると、胃の上部を広げて、胃の中に食べ物をたくわえようとします(貯留機能)。さらに胃は、波打つように動く蠕動(ぜんどう)運動によって食べ物と胃液を混ぜ合わせ(攪拌(かくはん)機能)、食べ物を消化して粥状にし、粥状になった食べ物を十二指腸へ送り出すはたらきを行っています(排出機能)。
このように、胃には貯留、攪拌、排出という3つの運動機能があります。これらのはたらきに障害が生じて、機能性ディスペプシアの症状が引き起こされると考えられています。
運動機能障害-1.貯留機能の障害
食べ物が食道から胃へ入ってきても胃の上部がうまく広がらず、入ってきた食べ物を胃の中にとどめることができなくなってしまう状態を指します。これにより、早期飽満感や痛みなどが引き起こされます。
運動機能障害-2.排出機能の障害
胃の中にある食べ物を、十二指腸へうまく送ること(排出)ができず、胃の中に食べ物が長くとどまってしまう状態を指します。これにより、胃もたれなどが引き起こされます。一方で、胃から十二指腸への排出が速くなってしまい、痛みなどの不快感が引き起こされる場合もあります。
貯留機能と排出機能の関係
胃の貯留機能と排出機能は密接に関係しているといわれています。
本来、胃の中の食べ物は十分な時間をかけて十二指腸へ運び込まれますが、胃の貯留機能が障害されると、急に十二指腸へ食べ物と胃酸が運び込まれてしまいます。すると、十二指腸は胃の排出機能を抑えるように働きかけて、結果として食べ物が胃から排出されなくなり、胃もたれなどの症状を引き起こす場合もあります。
胃の知覚過敏
「知覚過敏」とは胃が刺激に対して痛みを感じやすくなっている状態を指します。正常であれば何も感じない程度の刺激であっても、「知覚過敏」の状態では、少量の食べ物が胃に入るだけで胃の内圧が上昇し、早期飽満感が引き起こされたり、胃酸に対して過剰に痛みや灼熱感などを感じることがあります。
胃酸分泌
十二指腸に胃酸が流れ込むことによって胃の運動機能が低下し、胃もたれなどのさまざまな機能性ディスペプシアの症状が引き起こされることが知られています。また、知覚過敏の状態では正常な胃酸分泌であっても痛みや灼熱感などを感じることがあります。
心理的・社会的要因
生活上のストレスなどの心理的・社会的要因と機能性ディスペプシアは関係があると言われています。
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)
ピロリ菌とは胃潰瘍や十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃がんなどにかかわる、胃粘膜に生息する細菌です。このピロリ菌と機能性ディスペプシアの関係は明らかにされていません。
機能性ディスペプシアの診断や治療は、主治医が患者さんの症状をきちんと把握することから始まります。また機能性ディスペプシアは、症状や症状の出ている場所が変化することがよくある病気です。そのような時には治療法を変える場合もありますので、症状に変化があれば、その都度、遠慮せずに相談し、根気よく治療に取り組みましょう。
当院には専門医副院長 大家 昌源( おおや しょうげん)がいますので受診希望の方はお問い合わせ下さい。